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こころのヨガ(6)
2015/02/19(Thu)
けだるい暑さの中、セミの声をききながらスイカをほおばる、私の好きな夏がきました。
先日、みたらし祭を楽しむために夜の下鴨神社にいきました。神社は糺の森という広い森に囲まれています。
その森で、セミがさなぎを破り、羽を広げていく様子に出会いました。

夜の闇のなか、からから出たばかりの一匹のセミが、まだ白くぬれている羽を広げ乾かしていました。
そして、時間をかけて羽をかわかした後で、透明になった羽をはばたかせ木々のほうへ旅立っていきました。
そのセミの様子は、私に何人もの患者さんを思い出させたのです。
心療内科の患者さんの中には、このセミのように大きな変化を遂げられる方がたくさんいらっしゃいます。

ある30代の女性のお話をしましょう。
よき母、よき長男の妻として、あまりご自分の主張はせず、夫に、お姑さんにあわせて生きてこられた方でした。
ところが、数年前からお隣さんとのトラブルにみまわれたのです。
お隣さんは、引っ越してこられて以来、よく日中大声でどなり、大きな音で音楽やTVをかけられ、そのことで何度かお話ししたものの改善がないとのことでした。うるさいのは日中だけ、自分だけが我慢すればいいと思うようになっていった頃から、次第に、耳鳴りと片頭痛に悩まされるようになったそうです。耳鼻科や脳外科でも異常ないといわれ、心療内科を受診されました。

お話しを伺うと、自分だけが我慢すればいいのだから、症状だけがとれたらいいとおっしゃいました。
お薬で体の症状が少し落ち着いてくると、悪いように考えて眠れない、自分なんかいないほうがいいと涙され、
いわゆるうつ状態が表面にでてきました。これは、症状が緩和され体の余裕が出たときに、本当の心のつらさがでてきたサインなのです。お薬で気持ちを持ち上げながら、何が本当につらかったのかを一緒にみていきました。
すると、その方は自分の生き方を振り返られ、周りのことばかり考え、自分の気持ちをおさえてきたことに初めて気づかれたのです。問題はお隣さんでも、お姑さんでも、ご主人でもなく、自分を大切にしていなかったこと、どうにもならないと思い込みひとりで抱えすぎていたことに気づかれたのです。そのうち、“いいたいことは伝え、Noということも時には必要。自分らしくいきることが大切。”と話されました。そういわれた頃から、うつ症状、耳鳴り、片頭痛はみるみる回復し、“これからは自分らしく生きたい。そうできると思う。”と笑顔でおっしゃり、通院はおしまいになりました。初診時の落ち込んだ顔や、涙の顔とはうって変わって、最後の笑顔はかがやくようでした。

心療内科で取り組んでいるのは、病を治すことだけではありません。
患者さんが、病を通して、体と心の結びつきや自分自身への気づきをえ、健康を創造し、
自分らしい幸福な人生をおくれるような配慮も含む医療を目指しています。
つまり、病を通して患者さん自身の成長や幸福のサポートすることを理想としているのです。
ですから、幼虫がさなぎになり、そして成虫になるかのような、患者さんの大きな変容に寄り添うことができる時、
心療内科医としての深い喜びがあります。
そして、患者さんと出会えたことに感謝し、ちょっぴり寂しい気持ちを抱きながら、今日も患者さんの旅立ちを見送っています。

「インナームーブ」2008年9月号 国際ヨガ協会・発行

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